色々な慢性疾患の治療2

全身性エリテマトーデス

全身性エリテマトーデス(SLE)は顔面の蝶形紅斑、手指の紅斑、光線過敏症、禿頭、レイノー現象、口腔、鼻咽頭潰瘍などを特徴とする疾患である。発熱、全身倦怠感、体重減少、関節痛、浮腫などを初発症状として発症する。10歳台から40歳台の女性に多く発症し、人口十万人に対して2から3人の頻度でみられます。腎臓や心臓に重篤な合併症を引き起こすことがあり予後に大きな影響を及ぼす。腎臓病変はループス腎炎と呼ばれ、蛋白尿や高血圧を呈し最後には尿毒症へ移行することがある。心臓血管病変としては、心膜炎、心筋炎、レイノー症状がある。検査では抗DNA抗体や、LE細胞が陽性になる。西洋医学的治療は副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤が用いられる。しかしながら、副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤には多くの副作用がみられる。SLEに対して、漢方薬を併用することによってなかなか良い治療効果を示すことがある。

全身性エリテマトーデスの炎症を抑える目的のために、柴胡剤が多く用いられる。柴胡剤には間質性肺炎を引き起こすことがあり、大柴胡湯、小柴胡湯や柴苓湯を服用中に、咳や息切れなどの症状の出現する場合には注意が必要である。体力がある場合(実証)は、のぼせ、精神興奮、皮膚の熱感のある時には、温清湯を用いる。季肋部に抵抗感とお血のある時には、大柴胡湯合桂枝茯苓丸を用いる。体力ふつうの場合(中間証)は、発熱や炎症の強い時には、小柴胡湯を用いる。関節痛などの症状がある時には、よく苡仁湯を用いる。浮腫などの腎臓症状を合併している時には、柴苓湯を用いる。体力がない場合(虚証)は、季肋部に抵抗感がある時には、柴胡桂枝乾姜湯を用いる。

全身性エリテマトーデスの漢方治療

体力がある場合(実証)

・温清湯・のぼせ、精神興奮、皮膚の熱感のある時に用いる。

・大柴胡湯合桂枝茯苓丸・胸脇苦満とお血のある時に用いる。

体力ふつうの場合(中間証)

・小柴胡湯・発熱や炎症の強い時に用いる。

・よく苡仁湯・関節痛などの症状がある時に用いる。

・小柴胡湯合五苓散(柴苓湯)・浮腫などのSLEの腎臓症状を合併している時に用いる。

体力がない場合(虚証)

・柴胡桂枝乾姜湯・虚証で胸脇苦満のある時に用いる。

〔症例〕全身性エリテマトーデス(SLE)の22歳の女性。関節痛、脱毛を主訴として来院した。1年前に四肢の関節痛が出現し大学病院でSLEと診断され、大学病院で副腎皮質ステロイドのプレドニン5mgと鎮痛剤の投与を受けていた。関節痛に加えて脱毛が起こるようになり、漢方治療を求めて当院を受診した。腹力は中等度以上であり、よく苡仁湯加牡蛎を与えた。3週間で関節痛と脱毛は徐々に改善し、6か月後は症状は著明に改善した。