色々な慢性疾患の治療2

関節リウマチ

関節リウマチは全身の多くの関節に慢性的な炎症が起こり、関節が破壊され変形する病気である。関節炎の経過は、一般に進行性であるが、機能障害を残さない軽症のものから日常生活に、かなりの支障を来す重症のものまである。

原因としては、自己免疫という異常な機序(仕組み)によって発症すると考えられています。ヒトの体内に、外からの細菌やウイルスなどが侵入すると、細菌やウイルスなどを破壊し、生体を守る「免疫」という仕組みがある。自己免疫とは、自分の関節の組織を外敵と認識して、自分自身を攻撃してしまうことを言う。女性に多く、男性の約4倍以上の患者さんがいて、発症は40歳代に多い。

慢性関節リウマチでは、関節の滑膜が増殖して厚くなり、関節液が増加し、軟骨や骨を破壊して、関節が変形する。症状は朝のこわばりや痛み、関節の腫脹、関節の痛み、リウマチ結節などが出現し、全身的には、易疲労感、全身倦怠感、食欲不振、体重減少、微熱などの症状が出現する。

検査所見ではリウマチ因子が陽性になり、炎症反応であるCRPの陽性、血沈(赤沈)が亢進する。

関節リウマチの治療の目標は①痛みの軽減、②炎症の軽減、③関節構造の保護、④関節の機能の維持である。

実際の関節リウマチの治療には、基礎療法、薬物療法、理学療法、手術療法がある。

1、基礎療法-関節の負担を除き、病気の悪化を予防する治療です。カゼにかからない、身体を冷やさない、過労や睡眠不足、精神的ストレスを避ける。局所の関節を保護する。全身の安静と栄養を十分にとるようにする。

2、薬物療法

○非ステロイド系抗炎症剤:炎症を鎮めて、痛みを和らげる作用がある。胃潰瘍などの副作用がある。

○抗リウマチ薬:異常な免疫反応を抑え、関節の破壊をふせぐ作用がある。最近の研究では、関節リウマチと確定診断されたら、早期に抗リウマチ薬を積極的に治療に用いる。

○ステロイド薬:即効的に症状を改善し、異常な免疫反応を抑える作用があるが 、副作用として、感染しやすくなったり、骨がもろくなったりする。

○免疫抑制剤:過剰な免疫反応を抑制する作用があります。

3、理学療法-リウマチで侵された関節の変形や固定を防ぎ、筋肉の強化が目的で、マッサージや理学療法を行う。

4、手術療法-増殖した滑膜を切除したり、破壊された関節を人工関節に置換する手術をする。

養生としては、身体を冷やさないことが大切である。気温が下がると関節リウマチの患者さんは体調が悪化する。クーラーのない昔は、関節リウマチの患者さんは寒い冬に悪化し、夏には楽になることが多かった。しかし、最近では、クーラーの為に、夏に悪化することが多くなった。電車、バス、会社の中など、どこに行っても冷房が効いているためである。また、ストレスをためないことが重要である。規則正しい生活をして、食事は、腹7分目を守り、肥満にならないようにする。肥満は関節に悪影響を与える。

漢方薬について、漢方薬は副作用が少なく、関節症状をかなりの程度改善することができる。漢方薬を単独で用いる場合もあるが、非ステロイド系抗炎症剤、抗リウマチ薬、ステロイド薬と併用して用いることができる。

体力がある場合(実証)

・越婢加朮湯・口渇と関節の腫脹と疼痛があり発汗傾向のある時に用いる。体力ふつうの場合(中間証)

・よく苡仁湯・亜急性期(急性期を過ぎた時期)で関節の腫脹、疼痛が軽度から中等度のものに第一選択として用いる。

・麻杏よく甘湯・体力中等度以上で関節の腫脹と疼痛がある時に用いる。体力がない場合(虚証)

・桂枝芍薬知母湯・慢性に経過して身体が衰弱して、関節の変形、腫張が著明な場合に用いる。

・桂枝加朮附湯・冷えや悪寒、寝汗などがあり胃腸の弱い時に用いる。自然と身体から汗が出てくる傾向のある場合に用いる。

〔症例〕52歳、主婦。約17年前から、関節リウマチと診断されて、某大学病院で加療を受けている。抗リウマチ薬、非ステロイド系抗炎症剤、ステロイド薬を服用しているが、薬剤の副作用が心配で、少しでも薬の量を減らしたいという訴えで来院。現在、軽度の関節の痛みがあり、自分の判断で、痛み止めの非ステロイド系抗炎症剤の量を減らしている。体力はふつう(中間証)であると考えて、よく苡仁湯を煎じ薬で与えたところ、疼痛は著明に改善して、少量の抗炎症剤で痛みはコントロールされた状態となり、現在も良好な症状となっている。抗リウマチ薬、ステロイド薬の量は変化はない。

〔実例〕55歳、主婦。慢性関節リウマチの患者さん。関節の腫脹と疼痛、変形がある。プレドニン10mgを服用中で、漢方薬の治療を希望されて来院した。胃腸が弱く、鎮痛薬のため胃痛が時々ある。虚証と考え桂枝加朮附湯を与えた。2か月後より、関節の疼痛が徐々に改善して、鎮痛薬を服用する回数が減じた。その結果、胃痛もよくなり、6か月後よりプレドニン5mgと減量することができた。症状が悪化すると、一時的にプレドニン増量するが、良好な状態である