色々な慢性疾患の治療
変形性膝関節症
変形性膝関節症は50歳台以上の中高年者で肥満した女性に多くみられる。初期の症状は、正座の時や階段昇降の時に痛みを訴え、病状が進行すると、痛みがひどくなり正座は不可能となる。一般に関節とは2つの骨と骨をつなぐ、つなぎ目である。2つの骨の先端は2~4mmの軟骨があり、関節を曲げる時のクッションの役割をしている。関節の内側には滑膜という薄い膜があり、滑膜は関節液を分泌したり、吸収したりする働きがある。変形性膝関節症とは、簡単に言えば関節の老化現象によって起こるものです。年をとるにつれて、関節の軟骨が衰え、徐々にすり減っていき、軟骨がはがれて、滑膜を刺激して、滑膜に炎症が起こり、痛みが起こる。滑膜の炎症により、関節内に過剰な水がたまっきて、変形性膝関節症という病気になる。日常生活の注意点としては、膝に負担をかける姿勢は避けるようにする。西洋医学的治療としては、湿布して痛みを軽減したり、鎮痛薬で痛みを抑えたり、サポーターで関節を固定する、という治療法がある。しかし、湿布薬で皮膚炎を起こしたり、鎮痛薬の副作用で胃腸障害や吐血を引き起こすこともある。変形性膝関節症に対して漢方薬はなかなか良い効果を示す場合が多い。
・変形性膝関節症に対する基本となる漢方薬は、防已黄耆湯である。実証の場合には、麻黄を加味するか、越婢加朮湯と合方する。虚証の場合には、附子を加味するか、桂枝加朮附湯を合方するのが治療の基本である。
体力がある場合(実証)
・越婢加朮湯合防已黄耆湯・小便が少なく口渇がある時に用いる。
体力ふつうの場合(中間証)
・防已黄耆湯・色白で水太り気味の人に第一選択に用いる。
体力がない場合(虚証)
・桂枝加朮附湯合防已黄耆湯・胃腸虚弱の時に用いる。
〔症例〕68歳の婦人Fさん。平成3年9月8日、腰痛と両膝の疼痛の為に当院を受診した。西洋医学的診断は変形性膝関節症で、汗かきで肥満して水っぽい皮膚をしていた。防已黄耆湯エキスを投与し、四週間服用して腰と膝の疼痛はうその様に改善した。