前院長 森由雄の漢方治療録 Herbal Medicine

2026年以降のコラム Columns from 2026 onwards

からだに優しい漢方    -森由雄医師のブログ-


 クリニックのホームページに「からだに優しい漢方」としてブログを載せることにしま した。その前に、私の漢方の経歴について、お話します。私は、3人の漢方の名医に漢方 を習いました。最初に習った先生は、寺師睦宗先生という不妊症の大家の先生でした。漢 方の基本の知識(古典的教科書、治療法)と実技(脈診、腹診、診察法)、生薬学(生薬 の知識、実際の調剤法)などを先生の診療所で教えていただきました。二番目の先生は、 山田光胤先生でした。内科、精神科、皮膚科の漢方を、阿佐ヶ谷の先生の診療所で教えて いただきました。皮膚病の漢方治療を含め日本最高の名医でした。山田光胤先生のおかげ で、皮膚病治療に対して自信を持って行うことができる様になりました。山田先生は、漢 方診察法、診断学(脈診、腹診)についても、日本で最高の方でした。3番目は、丁宗鐵 先生です。丁宗鐵先生は東大助教授、日本薬科大学学長をされた、とても有名な漢方医で す。東大の丁先生の漢方研究室で6年間、特別研究生として動脈硬化と漢方の研究を行い 、博士論文を書きました。また、東大病院内科で漢方診療を約3年間を行い、その後、横 浜市大病院(浦舟)内科で漢方診療を約3年間を行いました。2007年より2013年まで横浜 市大医学部で非常勤講師として学生に漢方を講義し、2016年より横浜薬科大学客員教授に 就任し、現在は、森クリニックで漢方診療をしています。私は、2026年2月で70歳になり、100歳まで生きて漢方医を続けるという目標を定めました。どうぞよろしくお願いいた
します。

不妊症


 不妊症の患者さんの実例です。 〔症例〕31歳、女。挙児希望。結婚して6年になるが、妊娠したことがない、と言います 。子供が欲しいとの希望で、当院をX年5月2日初診となりました。2年前産婦人科受診し て検査をし、卵管は通っており、婦人科の治療、人工受精などをしても全く妊娠しないと いうことです。腹部の診察〔腹診〕では、下腹部はやや堅く圧痛があります。これは、下 腹部の血行が良くないお血の状態と考えられました。そこでお血の治療に用いる桂枝茯苓 丸を服用していただいたところ、2か月後に妊娠し、翌年、3200グラムの男児を出産しま した。
 不妊症とは生殖可能な年齢において、結婚後1年以上経過しても子供ができない人を言 います。漢方的に女性の不妊症の原因としては、①冷え症、②お血(おけつ)体質、③胃腸 虚弱、④実証で肥満型のタイプなどがあります。①冷え症は不妊症の重要な原因で、当帰 や芍薬という生薬で、血を温めると妊娠しやすい母体になります。当帰芍薬散や附子など を用います。②お血体質の人は、「血」の病理的産物であるお血が身体に溜まっているの で妊娠しにくい状態になっています。お血を治療する駆お血薬の桃仁や牡丹皮などでお血 を除き、妊娠しやすい母体にするのです。薬としては、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散などがあ ります。③胃腸虚弱の人は、妊娠を維持する力が低下しており、胃腸を丈夫にして妊娠に 耐えられる母体にします。安中散、六君子湯などを用います。④実証で肥満型の人は、身 体に余分なものが付いていて妊娠を妨害していると考えます。瀉剤という身体から余分な ものを排出する漢方薬で治療します。大黄や枳実などの生薬が用いられ、薬としては大柴 胡湯などを用います。母体の弱点が改善されたら不妊症の第一選択薬である、当帰芍薬散 を用います。

不妊症の漢方治療

体力がある場合(実証)
・桂枝茯苓丸・腹力充実してお血のある時に用います。
体力がない場合(虚証)
・当帰芍薬散料・冷え症で眩暈や下腹部に圧痛などのある時に用います。
・当帰建中湯・胃腸が弱く、月経痛などの強い場合に用います。
・六君子湯・脾胃の虚証の時に用います。

月経困難症


 月経困難症の患者さんの実例です。
 〔症例〕24歳、女。
 母親に付き添われて、顔色の悪いやせた女性が、受診しました。常に胃腸の調子が悪く 、月経が重くて月経の時に下腹部痛、腰痛がひどく仕事が全くできないと言います。腹部 は、腹直筋が張っていて下腹部に圧痛があります。腹直筋の緊張は、胃腸虚弱の人に多く みられ、漢方で言う虚証と考えられます。虚証の月経困難症に用いる当帰建中湯を服用し ていただきました。次の月経は少し楽だったそうです。3月後の月経では、下腹部痛や腰 痛がかなり改善しました。6月後には僅かの腹痛のみとなりました。ほぼ完治となりまし た。
 月経困難症とは月経の時および月経前にさまざまな障害が出現し、日常生活に支障をき たすことを言います。月経前後の下腹部痛、腰痛、下腹部膨満感や重圧感などが主要な症 状で、起き上がることができず、鎮痛剤、鎮静剤を必要とする場合は病的とされています 。月経困難症の第一選択薬は、当帰建中湯です。

月経困難症の漢方治療

体力がある場合(実証)
・桂枝茯苓丸・腹力充実してお血のある時に用いる。
体力ふつう場合(中間証)
・当帰芍薬散・眩暈やお血のある時に用いる。
体力がない場合(虚証)
・当帰建中湯・胃腸が弱くて、お血のある時に用いる。

更年期障害


 更年期障害の患者さんの実例です。
 〔症例〕52歳、女。最近、月経が不順になり3か月くらい月経が無いことがあり、常に いらいらして、夫に当たり散らすことが多くなりました。突然、汗がでてきて、のぼせる ような症状が出てきました。漢方治療を求めて当院を受診しました。更年期障害と診断し て、加味逍遙散を飲んでいただきました。3週間服用すると気持ちが落ち着いて、いらい らや汗が少なくなりました。2か月間服用すると症状はかなり改善しました。ほぼ通常の 生活ができる様になりました。
 更年期とは女性の45歳から55歳までの期間を言います。更年期には女性ホルモンが減少 することによって、自律神経や身体のバランスが崩れて、加齢による影響も伴って、発汗 、のぼせ、いらいら、月経不順などの多彩で不愉快な症状が出現します。これが更年期障 害です。更年期障害の第一選択薬は、加味逍遙散です。また、鍼灸に興味のある方は、三 陰交や足三里に自分でお灸をするとよい場合があります。三陰交は婦人のさまざまな病気 の治療に用いられます。更年期障害や月経困難症、逆子の治療に効果があります。足三里 は胃腸を丈夫にして、気、血を調整し、結果として更年期障害を治療する効果があります。

更年期障害の漢方治療

体力がある場合(実証) ・女神散・のぼせ、頭重感、不眠、不安などの症状がある時に用います。
・桂枝茯苓丸・のぼせがあり、腹力充実して下腹部が堅くて圧痛がある時に用います。
体力がない場合(虚証)
・加味逍遙散・体質は中間から虚弱で、たいへん幅広く用いられていて、更年期障害の第
一選択薬です。
・当帰芍薬散・体質は虚弱で、眩暈やお血のある時に用います。

勃起障害 ED


勃起障害 EDの患者さんの実例です。
 〔症例〕45歳の男性が最近ペニスが勃起しない、と訴えて来院しました。体格が良く、 肥満気味で、会社の中間管理職で、仕事は多忙で休日もゴルフなどで外出することが多く ストレスが多い方です。会社の健診では糖尿病はありません。便秘、肥満があり、肋弓下 の抵抗感があります。漢方的には実証という状態です。実証に用いる大柴胡湯を服用して いただきました。休日はできるだけ体を休める様にお話しました。漢方約を服用して5日 後に妻とのセックスが可能となったいうことです。その後の経過は良好です。  勃起障害 EDとは満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持でき ない状態と定義されています(日本性機能学会・日本泌尿器科学会編『ED診療ガイドライン 第3版』) 。EDは、患者である男性のみならずパートナーの生活の質QOLをも著しく低下さ せる可能性のある病態です。1998年に行われた疫学調査によれば、わが国の有病者数は、 中等症・重症EDの患者を合わせて約1130万人と推定されています。主訴がEDであることを 確認後、糖尿病などを除外することは重要です。
漢方の治療では 虚証と実証を区別します。第1 選択薬は、桂枝加竜骨牡蛎湯です。体力がある場合(実
証)は、大柴胡湯を用います。虚証には桂枝加竜骨牡蛎湯、八味地黄丸を用います。

勃起障害に用いる漢方薬

体力がある場合(実証)
・大柴胡湯・実証で便秘、肥満、肋弓下の抵抗異常感のある時に用います。
体力がない場合(虚証)
・桂枝加竜骨牡蛎湯・陽証で虚証の時に用います。
・八味地黄丸・陰証で虚証の時に用います。
治療方針-参考までに現代医学的治療も述べます。
 治療の中心はバイアグラなどのPDE5(phosphdi-esterase type 5)阻害薬です。通常量よ
り開始し無効であれば増量します。
 陰茎硬度は一時的挿入は可能であるものの、勃起持続しないなど、いわゆる「中折れ」
状態である場合は、
1、バイアグラ50㎎錠(シルデナフィル)、またはレヒドラ10mg錠(バルデナフィル、速効
性)性交1時問前かつ空腹時、またはシアリス10mg錠(タダラフィル、長時間作用)性交1時
間前)1回1錠1日1回服用。人によっては、さらにその半量で有効な場合もあります。
2、軽症であれば通常量のPDE5阻害薬で効果が認められますが、無効の場合、服用方法な
と適切に服用が行われているか、十分な性的刺激か得られているか、確認します。
バイアグラ50㎎錠(シルデナフィル)-最も知られている。25㎎錠、50㎎錠があり、性行
為1時間前服用、空腹時服用なら30分で作用。食事の影響受けやすい。3~5時間持続。
 レヒドラ10mg錠(バルデナフィル)は速効性である。10㎎錠、20㎎錠があり、性交1時問
前服用。空腹時服用なら20分で作用。食事の影響受けにくい。4~8時間持続。
 シアリス10mg錠(タダラフィル)は長時間作用。10㎎錠、20㎎錠があり、性交1時間前に
1回1錠1日1回服用。食事の影響最も受けにくい。20~36時間持続。
 バイアグラ50㎎錠、レヒドラ10mg錠、シアリス10mg錠は、当院で自費診療で処方可能で
す。

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診療時間
日/祝
9:00 - 12:00
15:00 - 18:00

※ 木・日・祝日は休診日となります。
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